甘い誓いのくちづけを
「わかってたんだ……」


「え?」


ポツリと呟いた理人さんに小首を傾げると、彼が後悔を滲ませながら苦笑した。


その表情があまりにも綺麗で、そのまま目が離せなくなる。


そんなあたしの耳に、後悔や申し訳なさの混じった悲しげな声が届いた。


「瑠花に早く自分の事を話さないと、両親の時みたいになるかもしれないって……」


「理人さん……」


「でも、言えなかった……」


理人さんは小さく零した後、悩ましげに笑った。


「瑠花には、貴島の会社とか肩書きとかを全部取っ払った、ただの貴島理人を見て欲しかったから……」


彼が頑なに自分の事を隠していた理由は、あたしが考えていたよりもずっと人間らしいものだった気がした。


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