甘い誓いのくちづけを
「夢、じゃ……ないんだ……」


ポツリと呟いた言葉と同時に込み上げて来たのは、瞳の奥と喉の奥の熱。


「……っ!」


それを堪えようと唇を噛み締めた瞬間、ベッドサイドに置いてある電話が鳴り出した。


この部屋の電話に出るべきなのか迷ったのは、ほんの一瞬の事。


さっき部屋の中を見回した時点でここがホテルの一室で、そして何となくこの部屋にいるのは自分だけだって事をわかっていたから…。


ほんの少しだけ熱が和らいだのを感じながら、ゆっくりと深呼吸をする。


それから、サイドテーブルに手を伸ばして受話器を取り、怖ず怖ずと耳に当てた。


「……はい」


「おはようございます、荻原(オギワラ)様」


相手の丁寧な挨拶から始まった会話は、朝食についての相談だった。


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