甘い誓いのくちづけを
「モーニング、ですか……?」


「はい」


頼んだ記憶はもちろん無いし、そもそもあたしは未だにどうして自分がここにいるのかをわかっていない。


「あの……たぶん、頼んでいないと……」


そう言いながらも、もしかしたら自分で頼んでいたのかもしれないという可能性が、頭の中を過ぎった。


何せ、昨夜の途中からの記憶があまりにも曖昧過ぎるせいで、断言は出来ない。


不安に思って頭の中を整理しようとしたけど、鈍い頭痛に邪魔をされてしまって、思い出す事は出来なかった。


「いえ、貴島(キジマ)様からお運びするようにと、承っておりますので」


「え……?」


聞き覚えの無い、名前。


だけど…


それが誰の事なのかは、すぐにわかってしまった。


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