甘い誓いのくちづけを
「で、でも、もう泊まっちゃったんだし、後で朝食も来るし!」


自分自身に言い聞かせるように頷きながら、覚悟を決めようと深呼吸をした。


「うん!一生に一度の贅沢だと思えばいいじゃない!」


自分を励ますように言いながら顔を上げて、浴槽にお湯を溜める。


それに、今日くらい……


失恋どころか婚約を破棄されてしまったのだから、今はこれくらいの贅沢をしても罰(バチ)は当たらないと思う。


開き直るしか無かったのもあるけど、そうでも思わなければ色んな感情に負けてしまいそうだった。


「……よし、とりあえずお風呂に入ろう。せっかくの広いバスルームなんだもん!一生分、満喫しなきゃね!」


無駄に明るい声で発した言葉が、湯気が漂うバスルームの壁を揺らすように響いた。


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