甘い誓いのくちづけを
再びステージのある前方に視線を遣ると、理人さんが挨拶を終えたところだった。


「乾杯」


「あ、はい……」


同じ色の液体が揺れるワイングラスを傾けた英二さんに頷いて、自分のグラスを傾けてからゆっくりと口を付ける。


どうしてだろう……


あの夜に初めて飲んだキールは辛口に思えて、どちらかと言えば苦手な味だった。


それなのに…


たった今、舌に触れたこのカクテルには甘さすら感じてしまう。


理人さんの言葉を噛み締めるように、キールを喉に流し込んでいく。


「パーティーはまだ終わらないから、飲み過ぎないようにね」


「気をつけます」


理人さんの傍に行きたいあたしの気持ちを見透かしてなのか、英二さんはフワリと笑っていた――…。


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