甘い誓いのくちづけを
「ご馳走様でした」


さっきと同じように両手を合わせ、今度は空っぽになったお皿にペコリと頭を下げる。


フルーツまで満喫したあたしは、ティーカップから漂う香りを堪能しながら紅茶を飲んだ。


朝食を楽しんだ後で不意に漏れたため息は、テーブルに置いていた腕時計が視界に入ってしまったから…。


物に、罪がある訳じゃない。


ましてや、とても使い易くて、デザインも気に入っている物。


だけど…


「もう、着けない方がいいよね……」


視界に入る度に悲しくなってしまうから、これはもう使わない方がいいと思う。


込み上げる悲しみを流すように紅茶をグッと飲み干した後、文博からプレゼントされた腕時計をバッグに入れた――…。


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