甘い誓いのくちづけを
―――――――…



帰り支度をした後、見納めのような気持ちで部屋をグルリと見回した。


改めて、高級感が漂うその雰囲気に魅せられる。


今更だけど、自分には不釣り合いな場所だという事をひしひしと実感した。


何だか、昨夜から現実味の無い事ばかりが起こっている。


文博の浮気には薄々気付いていたとは言え、彼に婚約を破棄されて…。


泣き出してしまいそうだった時に、眉目秀麗な男性(ヒト)が現れて…。


名前も知らなかった彼とバーで飲んで、とうとう涙を零してしまって…。


朝になって目を覚ますと、自分では泊まろうとも思わないようなホテルの一室にいて…。


ついさっきは、まるでお姫様のような扱いまでして貰っていたのだから…。


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