甘い誓いのくちづけを
ワイングラスを置いて、理人さんの瞳を真っ直ぐ見つめる。


「ご迷惑をお掛けしてしまった事実は、消えませんけど……。昨日のバーでのお金も、ホテルの宿泊代も、きちんとお返ししますので……」


そこまで言ってから頭を深々と下げ、再び彼の瞳を見た。


「本当に申し訳ありませんでした」


「……君は、昨日から謝ってばかりだね」


困ったような微笑みとともに落とされたのは、ため息混じりの言葉。


だけど…


「すみません……」


やっぱり、あたしには謝罪の言葉を紡ぐ事しか出来ない。


ここに来るまでに色々な事を考えていたけど、結局はそれ以外に相応しい言葉を見付けられなかったから…。


理人さんは瞳を少しだけ細めながら眉を寄せ、困惑混じりの笑みを見せた。


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