甘い誓いのくちづけを
ダークグレーの瞳は相変わらず恐ろしい程に綺麗で、このままスッと吸い込まれてしまいそうになる。


困惑顔までカッコイイなんて、何だかずるいと思う。


こんな時にそんな余計な事を考えている時点で、ちゃんと反省していなかったのかもしれないけど…


こんなにも麗しい男性(ヒト)を前にしても雑念を振り払える程のスキルは、あたしには微塵も無かった。


「瑠花ちゃん」


優しい声に乗せられた名前は、まるであたしのものじゃないみたい。


ほんの一瞬だけ胸の奥が高鳴ったのは、きっと不可抗力。


呼吸が上手く出来なくなるんじゃないか、と思った。


僅かに生まれた戸惑いを必死に隠すあたしを余所に、理人さんはそれはそれは綺麗な笑みを浮かべた。


< 83 / 600 >

この作品をシェア

pagetop