甘い誓いのくちづけを
「俺はね、迷惑だなんて思ってないよ」


理人さんの表情に見入っていたあたしは、自分に向けられた言葉にハッとする。


彼はそんなあたしの様子を見透かすように微笑み、それから瞳を伏せて微苦笑を零した。


「昨日も言ったけど、不躾な事をしたのは俺の方なんだから」


「違います!た、確かに、正直驚きましたけど……。でも、あたしは理人さんのお陰で、指輪を外す決意が出来たから……。だから……」


咄嗟に発した言葉達だけでは、上手く伝えられなくてもどかしい。


だけど…


理人さんはそんなあたしの気持ちを察するように、柔らかく微笑んだ。


「昨日の夜も、似たような事を言ってくれたね。正直、昨日は後先考えずに行動してしまったけど、お陰でとても救われたよ」


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