甘い誓いのくちづけを
次の言葉を待つあたしに、理人さんは微笑んだまま眉を寄せた。


「これでも、今日は仕事が手に付かないくらい反省してたんだ……」


「え?」


「だから、昨日の事はお互い様って事でどうかな?」


少しだけ冗談めかした、言い方。


だけど…


その瞳は、至って真剣だった。


それでも頷く事が出来ずにいると、理人さんが困ったように首を傾げた。


「瑠花ちゃんは納得出来ないかもしれないけど、不躾な男を助ける為だと思って。ね?」


そんな風に言われてしまったら、もう素直に従う事しか出来なくて…


「……はい」


向けられた綺麗な笑顔に逆(サカ)らえない自分に心底呆れながらも、あたしは微苦笑混じりに小さく頷いた。


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