今さらなのよ!
腕をぶんぶん振り回すかすみの腕をかいくぐり、隆祐は仕方なくかすみの腕に以前、兄の隆一が力封じをした腕輪をつけた。



「ごめん、こうするしかない。
それから・・・これも。」


隆祐はかすみの耳元で呪文をささやく。


「君にかけてやりたいと何度も思った呪文だけど、こんなふうに使うことになるとはな。」



「あっ・・・熱い。隆祐さん・・・早く・・・。



隆祐はイプリファの王族だけが扱える欲情する魔法をかすみにわざとかけ、自分を求めさせたのだった。


(こんなことをして、つらい現実を嫌でもみることになるのか・・・。
あれ・・・?おかしいぞ。体中に愛撫されているのに、性交した様子がない!
どういうことだ・・・。H目的じゃなかったのか?

特殊な性癖をもつ男なのか?なぜだ・・・。かすみちゃんのことがほしかったわけじゃない・・・?まさか。)



隆祐はふっと自分に攻撃を仕掛けてくる敵のことが頭をよぎった。


すると次の瞬間、かすみが隆祐の足にかみついた。




「っ・・・!か、かすみ。」



かすみの目が赤く充血し、隆祐の下半身を狙って牙をむいてくる。



「なっ・・・何を!おぃ。」



「がぅ・・・ガウウウウ・・・。」



(普通じゃない!この感じ・・・この感じは。そうだ!
あのときの。街の人たちを操って俺を刺した・・・。)
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