キスなんてさせない(短編)
あたしは、一瞬ビックリして体が動けなかった。

何でお母さんが倒れてるの?

あたしが居ない間、何が起きたの?

「お母さん、お母さん」

あたしは、必死になって何度も“お母さん”と呼んだ。

でも、お母さんは目を覚まさなかった……

そうだ。救急車呼ばなきゃ。

あたしは、救急車を呼んだ。

―数分後

救急車を呼んだのになかなか来ない。

あたしは、落ち着かなかった。

ピンポーン……

あっ!! 来たかな。

「はい」

あたしは、勢いよくドアを開けた。

えっ……健太。

そこに居たのは、健太だった。

「健太、どうしたの?」

「陽菜にケータイにかけても全然出なくて心配して来たんだ……」

あたしは、ケータイを取り出して見た。

見ると着信が11件も着てた。

全部健太からだった。

「ごめん……。あたしが帰ったとき、お母さんが冷蔵庫の前で血まみれで倒れてたの。
だから気づかなかった……」

「それはいいけど……おばさんは、大丈夫?」

「さっき救急車呼んだけど、なかなか来なくて……。
お母さんは、何度も呼んだんだけど全然目を覚まさないの……
あたし、一人じゃ心細いから一緒についてくれる?」

「うん」

ピーポピーポ……

やっと救急車が来た。

「遅くなってすいません……。道が混んでて。で、患者はどこに?」

「家の中です」

「うわ、これはひどいな。とにかく急いで病院に連れて行かないと……
早く乗りなさい」

あたしと健太は、救急車に乗った。
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