レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
安売りなんか、するな。

あんたには価値があるよ。


色々、いい男も。
金持ちも、オヤジも。

たくさんの男を相手にした私が言うんだから。


間違いないよ。


まだ、ぼーっとしてる彼を横目に私はカバンからタバコを取り出して火を点けた。


「吸う?」

彼と目が合ったから、聞いてみたけどふるふると首を振る。
あれ?吸わないんだ。

禁煙かなんかかな。


「あらら。そう?
そういえば君、名前は?」


「…………伊織」


「伊織ね。
私は美佳」


「………………」


何かを考え込むように、伊織は俯く。

後から思うけど、きっとこん時は母親への罪悪感でいっぱいだったんだろうな。


明るくご飯食べたりしよ?そう、笑った私に伊織はこくんと頷いた。



端正な顔立ちをしながら、何も知らない伊織が可愛くて私は顎に手を置いて軽くキスをした。



伊織は何も言わない。
表情がない人形のようだった。


だけど、そんな伊織が私は気に入ったんだ。
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