レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
勝手にソファに腰をおろした俺は一息ついてから、寝室に目をやった。


……………


………泉。


「…どーしたの、千里」


昨日の記憶が多分全くないのだろう。
言うべき、か?

でも、多分。



泣くほどのことだから大事なことだよな。

「……昨日のこと、覚えてないか?」


「昨日?」


案の定、伊織はきょとんとしている。

「お前、潰れてたじゃん」


「ああ、俺全く記憶ない」


やっぱり。
無意識の内に全て言ったことなんだな。


少し黙ってる俺を訝しげな顔で見ている伊織。


その顔色は至って悪くない。
二日酔いしてないのか?

じゃあ、液キャベいらなかったか。


それから俺は昨日の車の件を伝えた。
伊織は素っ頓狂な声を出してから、まさか俺に言ったと思ってなくて半信半疑のまま感謝の言葉を漏らす。


いや、そんなことどうでもいい。


実際。



確かに酔っ払い!
と思ったけど。

あの、言葉を聞いてから全部吹っ飛んだわ。
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