組対のデカ
 おそらくわずか一度の取引で数千万の金が動く手筈だった。


 積荷が載った船の船長である在日外国人も、公安第一課の人間たちにより逮捕されている。


 銃器等を違法所持した銃刀法違反と、覚せい剤取締法違反などで公安の刑事たちが身柄を拘束した。


 おそらく長年日本にいたことで、日本語は分かるのだろう、警視庁で行われる取調べにも日本語で応じているようだ。


 俺たち組対は公安の出方をじっと窺っていた。


 その折、長谷川勇平が転落した際に残していたワープロ打ちの遺書から、本人以外の指紋が検出された。


 鑑識による鑑定の結果、右手の親指と人差し指の指紋だったようで、照合の結果、河村組の系列の組である<大塚会>の構成員、北川嘉美(よしみ)のものと判明した。


 警察としては対象者として浮上してきた北川を捕まえるのが先決だと思われた。


 男性である北川なら、長谷川をビルから突き落とすことは可能だ。


 しかも犯行時間帯にアリバイがないと分かると、犯行の線が濃くなってくる。
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