どうして好きなんだろう

「理央ちゃん…よね?私のこと覚えてる?」

聞き覚えのある可愛らしい声に、その彼女の白い肌を思い出しながら振り向く。

「ゆり…ちゃん。」

「あ、よかった!おぼえてくれてて。今日は大変なことになっちゃったよね、こんな格好で。」

そう言って自分の浴衣の袖を持ち上げる格好をする彼女。

それは本当にシンプルな濃紺の浴衣…だけど、私の目からみてもすごく高そう。

柄も上品に金魚があしらわれているだけなのに、飾り襟や帯の質感が安っぽくない印象を与える。

「かわいい…浴衣だね。」

それが、彼女には着慣れているようにすんなりはまっていて、思わずぽろりと漏れる。

「あ、ありがとう。おばあちゃんに買ってもらったの。でも、地味でし
ょ?」

頬を薄く染めて微笑む彼女はとても可愛くて、上品に結われた艶のある黒髪も、浴衣からのぞく白い肌も、見るたびになぜか胸がちりちり痛む。
< 97 / 215 >

この作品をシェア

pagetop