太陽には届かない
帰宅後、シャワーを浴びながら、陽菜はさっきまでのことが夢のように思えて仕方なかった。
良平の彼女の事も、自分の彼氏である泰之の事も、全てを忘れてキスを交わし続けたあの時間。
一体自分は、何のつもりで良平のキスを受け入れたのだろう。
そして良平は、何のつもりで私にキスをしたのだろう。
-私の過失?それとも良平の過失?それとも…-
定まらない思考回路を断ち切るかのように、陽菜は首を左右に振ると、シャワーを止め、浴室を出る。
あと数時間もすれば、また出社しなければならない。
良平とも顔を合わせる。
その時、どんな顔をすればいいんだろう…。
濡れた髪をドライヤーでさっと乾かすと、枕の上にタオルを敷いて、そのまま横になる。
良平との事で頭がいっぱいのはずなのに、睡魔が襲ってくる。
『3時間寝られる…。』
陽菜は独り言をつぶやくと、そのまま深い眠りに落ちていった。
夢を見る事もなく。