太陽には届かない

疑惑

翌日、PM12:00-

陽菜はランチを取るために、オフィスを出る。

隣に由梨が駆け寄ってくる。


『陽菜さん、今日すごく機嫌よくないですか?』


あいさつもそこそこに、由梨は陽菜の元に来るなりそう告げた。


『そう?そんな事ないよ。寝不足気味だから、ちょっとテンション高いかも知れないけど。』


陽菜はそうかわすと、エレベーターに乗り込んだ。

ふと顔を上げると、そこにいたのは、吉田だった。


『おう!おはようさん。』


いつも通り、オッサン臭い挨拶で陽菜に手を振る。


『おはよーさん。』


陽菜も真似をして返す。

由梨は陽菜と吉田を見比べると、意味ありげに笑った。きっと、陽菜と吉田の間には何かがあるに違いないとでも思っているのだろうと、陽菜は容易に想像できた。

エレベーターを降りると、ファミレスへ向かって歩き出す。

由梨は今日、サンドイッチを食べたい気分だからと言い、反対の方向へ歩いていった。

陽菜は朝起きてからずっと、今日はフレンチトーストと決めていた。

疲れているせいか、甘いものが欲しくなる。決してスタイルがいいとは言えないので、日々ダイエットなのだが、今日は特別だ。何か自分にご褒美のようなものをあげたい気分だった。


『相沢さん!』


その呼び声に、陽菜の耳よりも先に、心臓が反応した。

振り返るとやはり、そこには良平の姿があった。


『あのっ…昨日は大丈夫でしたか?オレ今日、緊張して…心臓バクバクゆってて…どうすればいいか分からなくて…』


しどろもどろの良平に、陽菜は微笑む。


『良平!』


良平の肩越しに、吉田の呼び声が聞こえる。


『吉田が呼んでるよ。お腹を空かせたアイツは気が短いから…行った方がいいんじゃない?』


良平は陽菜の言葉にうなづくと、慌てた様子で走っていった。
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