東京+ラブクラフト







―――… 変わらない



随分 大人っぽくなったけど
周りを包む空気みたいなモノは
あの頃と、同じ

むしろなんだか…
すごく、せつなく感じる





真新しい商店街の中を抜けて
私の靴音ばかりが響く
マンションがならんだ辺りに来ると



ザラザラに乾いた壁面には
長年の雨で 作られた跡

建物と建物の隙間に
ムリヤリ造ったみたいな
かなり幅の狭い、グレーのビル





スロープ付きの階段があって
コンクリートで出来た、脇の生け垣には

おしろい花と夕顔が
薄い玄関先の明かりを受け
輪郭を光らせながら、白く浮いてる





その入口の前で
ハルトさんは扉を開き
私を振り向いて 止まった








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