触れないキス
まず肩に乗っかる頭が目に入る。

そして、よく見慣れたフワフワの茶髪が頬に触れた。

あれ? もしかしてこの人……


「──桜太くんっ!?」


間違いない、桜太くんだ!!


「ちょっと、何やってんのっ!?」

「んー……」


必死にもがいて腕を離そうするけど、なかなか離れないし、なんだか様子が変だ。

周りからはキャーッ!と黄色い声が上がってるし……

もう何なの!? とりあえず早く離れてよ!!


「いい加減に──!」

「……りん……」


──え?

今……“凛”って言った?

微かに耳元で聞こえた、かすれた切なげな声に、一瞬私の動きはピタリと止まった。すると。


「何やってんだ、バカ桜太!!」


パコーンと頭を叩く音がしたと思うと、私の身体から腕が離れ……

桜太くんはそのままズルズルと床に崩れ落ちた。


「え、ちょっ、大丈夫!?」


床に突っ伏した桜太くんからは、スースーと寝息が聞こえる。

わけがわからず混乱している私に、桜太くんを叩いたクラスの男子が「大丈夫、大丈夫!」と言う。

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