触れないキス
でも、そんなことより。

桜太くん、私のことをたしかに『凛』って呼んでた。

一体どうして……


「あっ」


ふと思い付いて、自分の髪を触った。

今日は凛と同じ、トップでふんわりまとめたお団子の髪型。

私達は背格好も似てるし……まさか、酔ってて私と凛を間違えたの?


「ありえない……」


頭痛がする時のように額を押さえ、呆れ半分、嬉しさ半分の渇いた笑いをこぼす。

やっぱり桜太くんも凛のことが好きなんじゃない。

ここにいるのが私じゃなくて凛なら良かったのにね。


「あともう一押し、かな?」


想いが通じ合いそうな二人を想うと、私はニヤける顔を隠せなかった。




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