やっぱり、好きだ。
 
 「俺、ちょっと行ってくる。サヤちゃん、元気かどうか心配だし」

 森田が、身動きの取れない俺を置いて、サヤ子の方へ歩いて行く。

 俺もサヤ子に気づかれない様に少しだけ近づいた。

 「サヤちゃん、久しぶり。サヤちゃん家ってこの近くなの??」

 森田がサヤ子の肩を人差指でつんつんと突いた。

  「あ、森田くん。私はバイトがこの近くで・・・」

 少し驚いた表情で森田を見上げるサヤ子。

 「へぇ。俺もこの近くで塾講のバイトしてるよ。因みに翔太も同じとこ。サヤちゃんは??」

 森田はさりげなく俺の近況を伝え、サヤ子の近況を聞き出そうとしていた。

 「私は・・・カテキョ」

 言葉少なく答えるサヤ子の会話を、

 「へぇ。何教えてるの??」

 森田は途切れさす事なく繋ぐ。他人の事を言えないが、森田も俺と同じくチャラくて女慣れしている為、女子の会話を拾うが上手い。

 「・・・英語・・・です」

 でもサヤ子は、会話を広げる気がないのか。聞かれた事だけを答えた。

 サヤ子、英語好きだもんなぁ。分かり易いし。などと思っていたのは俺だけじゃなかった事をこの後知る。

 「サヤちゃん、英語好きだもんね」

 森田の言葉に俺もサヤ子も驚く。
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