やっぱり、好きだ。
 
 「サヤ子、俺、サヤ子に嘘ついた。 森田はサヤ子をストーカーとか言うヤツじゃない。ごめん」

 俺の姿はサヤ子に見えるはずもないけれど、携帯を耳に当てながら思い切り頭を下げた。

 「それは、私じゃなくて森田くんに謝る事でしょ」

 サヤ子は『謝る相手が違う』と俺を怒りもしなければ許しもしなかった。

 「イイコぶってないで怒れよ。俺、サヤ子が傷付く事いっぱいしたじゃん」

 最早、サヤ子に怒って欲しかった。 簡単に俺の事を許して欲しくなかった。

 「なんで怒るの?? 森田くんの件はどうかと思うけど、別に青山くんに傷つけられる様な事されてな」

 だけどサヤ子は怒ってなんてくれなくて、俺の強めな口調に少し怯えた様な声を出した。

 「俺、サヤ子の事ストーカーって言ったんだぞ」

 どうしてもサヤ子に怒られたくて。 じゃないと謝るに謝れなくて。自分の犯した悪行を言葉にしては、サヤ子に悪夢を呼び起こす。最低。

 「本当の事だもん。本当の事だから・・・。本当にごめんなさい」

 挙句サヤ子を泣かせては、謝るどころか謝らせる。

 何やってるんだろ、俺。鬼畜。

 「とにかく1回K大戻って。森田が留学する前に」

 もう、俺の罪はどうにもならないのかもしれない。罪は罪のまま、許される事はないのかもしれない。だったら、サヤ子と森田の幸せを応援すべきなのだろう。
< 40 / 353 >

この作品をシェア

pagetop