やっぱり、好きだ。
「サヤ子、俺、サヤ子に嘘ついた。 森田はサヤ子をストーカーとか言うヤツじゃない。ごめん」
俺の姿はサヤ子に見えるはずもないけれど、携帯を耳に当てながら思い切り頭を下げた。
「それは、私じゃなくて森田くんに謝る事でしょ」
サヤ子は『謝る相手が違う』と俺を怒りもしなければ許しもしなかった。
「イイコぶってないで怒れよ。俺、サヤ子が傷付く事いっぱいしたじゃん」
最早、サヤ子に怒って欲しかった。 簡単に俺の事を許して欲しくなかった。
「なんで怒るの?? 森田くんの件はどうかと思うけど、別に青山くんに傷つけられる様な事されてな」
だけどサヤ子は怒ってなんてくれなくて、俺の強めな口調に少し怯えた様な声を出した。
「俺、サヤ子の事ストーカーって言ったんだぞ」
どうしてもサヤ子に怒られたくて。 じゃないと謝るに謝れなくて。自分の犯した悪行を言葉にしては、サヤ子に悪夢を呼び起こす。最低。
「本当の事だもん。本当の事だから・・・。本当にごめんなさい」
挙句サヤ子を泣かせては、謝るどころか謝らせる。
何やってるんだろ、俺。鬼畜。
「とにかく1回K大戻って。森田が留学する前に」
もう、俺の罪はどうにもならないのかもしれない。罪は罪のまま、許される事はないのかもしれない。だったら、サヤ子と森田の幸せを応援すべきなのだろう。