小さな幸せ
キ、キスされた~?


て言うかもっとしてほしかったりして…


あたしはトロンとした顔を上げて土方さんを見つめる。


土方さんは目じりを下げて困ったように言う

「その顔反則、帰したくなくなる。」


帰さないで~心の中で叫んでた。


でも、土方さんは、あたしの頭をなでなでしてから

もう一度

ちゅ

と軽くキスして


ふふっと笑って


「今日はここまで。このまま家まで送るから。」


「あ、スク-ルまででいいです。」


「いや、多分、家の方俺が電話したから

 ちょっと挨拶しないとまずいから。


 携帯切ったままでしょ、心配してるよ。」



「あ、映画の後切ってたんだった。」


「映画?」


「ああ、最近話題の3Dホラーを…」


「誰と観たの?」


「ええっと、同僚の、男の子。」


「ふ~ん。」


え、怒った?

怒ってる?


エンジン掛けて車を発進させた。


無言で運転する土方さんを横目で見ながら、

不安感が募る

さっきまでの甘い雰囲気は

一気に氷河期に替わったような気がした。


何をそんなに怒ってるんだろう。



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