深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
「―――馬ぁ鹿」
ただじっと海だけを眺めて唇をかみしめていると、隣にいる芦谷さんが急に抱き締めてきた。
「何も知らないんなら俺が教えてやるよ、一から十まで何もかも全部。…そのかわり、環を甘やかすのも愛してやるのも俺だけの権利だからな。嫌ってくらい、甘やかして愛してやる」
そう告げると、芦谷さんの唇が私に触れた。
頬に、額に。
唇に触れるときは、かみつくように。
突然のことでびっくりしている私の後頭部に手を添え、逃げられなくして深く深く口付けた。
「………かわいくなりすぎなんだよ。もう、早くこうしたくてたまんなかった」
ようやく唇を離したかと思うと、それだけつぶやいて私の肩に顔を埋めた芦谷さん。
私は嬉しくて泣いてしまいそうなのを抑え、彼の背中に腕を回していた。