愛★ヴォイス
「真下さん、彼氏出来たって噂、本当だったんですね」

「はぁ~?」

「ケータイ見ながらそんな意味深なため息ついてたら、誰だってそう思いますよ」

言いながら向かいの席に腰掛ける。

「い、言っとくけどっ、彼氏じゃないから!」

「じゃあ片思いなんですか?」


(片思い……?)


言われて、何故か胸の奥がずきりと痛んだ気がした。


しかし考えてみれば、相手は私のことを何とも思っていなくて、私は彼との縁をこのまま繋いで行きたくてーー。

(状況的には片思いって言葉が一番しっくりくるかも……でもーー)


「ごめん、あたし社食行くから」

私はこの気持ちをはっきりさせたくなくて、曖昧に席を立った。


「相手はこの間の弁護士連中ですか?」

「な・なんでアンタがそんなこと知ってるのよ?!」

思わず振り向くと、大野はハンバーグの切れ端を口に入れたところだった。

「ここ(経理部)に居たら、嫌でも耳に入ってきますよ。仕切ってるのはうちのボスなんだし」

不躾にも、ソースのついた割り箸で部長席を指す。

「それにしても……真下さん、意外ですね」

「……?」

「部長が“真下は彼氏に貢ぐタイプだったー!”って大騒ぎしてましたよ」
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