LOVE OF DISTINY〜最低で構わないから〜【完】
「こんにちは」と声を掛けて近付くと、迷子の子供が、親を見付けて喜ぶような顔をした。

サワイさんを仕事に戻らせ、出入りするお客さんの邪魔にならないように、特別にバックヤードへ案内した。



「ごめんなさい。彼、何かしました?」



「いやね、僕が入ったら睨まれたからね」



最近、認知症の気があるお祖父ちゃん。

私は“そんな事はない”と、確信を持ちながらも頭を下げた。



「嫌な思いをさせて、すみませんでした。これに懲りず、また来て下さいね」



「ありがとうありがとう。僕も言い過ぎちゃったね」



サワイさんにも謝りながら、去って行くお祖父ちゃんを見送り、店内に戻る。
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