LOVE OF DISTINY〜最低で構わないから〜【完】
ファンデーションと、眉毛とグロスだけで。

長く、クルッとした睫毛には、マスカラを見受けられない。



「――海斗、遅いよ。私たちとすれ違っても気付かず、出掛けて行くんだもん」



女性は隣の男性を揺すって起こす。

「飯島君」と呼ばれた男性は、海斗を見るなり、ニコリと微笑む。



「浮気相手」



「何の話だ」



「夢で、海斗が紗英子を拐った」



「……アホは帰れ」



1人、先にエレベーターに乗り込もうとする海斗に、飯島さんはすがる。

「うぜぇ」と言われても、離れず彼女を手招き。
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