鏡【一話完結型】

『…主。聞きたい事はそれだけか』

「はい、それだけです」

『驚かないんだな。ここに来たモノは皆、我の姿を見て慄く』

「…いると、思ってましたから」

『クク、いると?そうか』


表情もわからない、鏡の主が微笑んだ様に由香里には見えた。


『では、その問いに答えよう』


ゴクリと由香里は生唾を飲み込んだ。
鏡の主の答えを由香里はじっと待つ。


『―――――……その答えは、母親だ』


その言葉に、由香里の目が見開く。




(…何だって?)


今、確かに鏡の中の住人は母親って言った?
…私のお母さんが、泣く?

私が死んで?


由香里の頭は混乱していた。
鏡の主の言った言葉が理解出来なかったのだ。


私がいなくなって泣くのなら、何故あんな事をするの?
私が嫌いなんじゃないの?いなくなって欲しいんじゃないの?



『信じられないか?』


狼狽する由香里を見て、鏡の主はそう声をかける。
由香里は真っ直ぐに鏡を見つめて、こくりと一度頷く。

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