蒼幻の天使~A Solitary Flower
男はゆっくりと近づき私の前に膝まづいた。

「なぜ、泣いている?」

男に言われて、自分が泣いていたことを思い出し、頬の涙に触れる。

「あ、これは……」

自分でもよくわからない。

男の美しくも儚い姿に、なぜか心が震えた。

心……?

ううん。

もっと深いところだ。

私の心さえも知らない。

私のこの胸のずっと奥。

それが、なんなのか、

私にはわからなかった。


心の奥深くにある、ソレが。


「そ、それより、今のなに!?なんでミラーハウスが一瞬で消えちゃったの?それにさっき私を襲ってきた男も・・」

私の前に倒れていた男も跡形もなく消えていた。

「お前が見ていたのは全て幻だ」



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