彼の薬指

扉の向こう

かじかむ手に、息を吐きかけながら歩く

周りには沢山の人が流れていく



寄る場所なんてなかった


美羽に気を使って言っただけなのに
この際だから、と
どこか入れそうなお店を探してみた



しばらく歩き、ビルの終わりに一軒
小さな看板の灯りが見える


《calm》


と描かれた看板


木製の扉の向こうから、
静かな音楽が聞こえた



『寒いなぁ…』



外の寒さも限界で
わたしはその扉をゆっくり押した
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