梶山書店物語〈壱〉
「やっと思い出したか」

手を伸ばしてくるのを避けて無意識に足が事務所に向かって走っていた。

…思い出した。
どうして、今まで思い出さなかったのか不思議で堪らない。

羽鳥千尋は芸名でもなんでもない本名だ。

何で、今頃になって出てくるんだ。

何で、憶えていやがるんだ。

「おい、大丈夫か?」

「っ!?…奥村くんか。
大丈夫っすよ、少し驚いただけっすから」

あの時、羽鳥千尋からも自分からも逃げ出したんだ。




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