志緒少々

台風から間もなくして、

私たちは平穏な日常を取り戻していました。

そして、その日こそ富士山を見に出かけようと意気込んでいた土曜日のこと。

またまた天気は雨。

ホテルを取っていなかったので、

その日は中止することになりました。

季節は晩夏。

日本がゲリラ豪雨に警戒していた時期です。

まるでシャワーのように地面を打ち付ける雨に、

出かけなくて良かったと胸を撫で下ろしていました。

「なんか雨の音おかしくね?」

相方がぽつりと呟きました。

耳を澄ましてみると、確かに何だかおかしいのです。

言葉では上手く説明できないんだけど、

今までに聞いたことのない、高い音でした。

< 28 / 684 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop