夜明けの星
と、突然声が聞こえた。
…聞こえた?
否、響いた、と言うべきか。
その声は耳から入ってきたのではなく、体内から沸き上がるように聞こえたのだった。
「………。」
尋ねたいことはたくさんあった。
ここは何処なのか、
どうして自分はここにいるのか、
今はいつなのか、
残りの四人は誰なのか、
…声の正体は何なのか…。
しかし、何一つ口にすることは出来なかった。
その答えを知りたくない、知ることの恐怖。そんなものを本能的に感じていたのだ。
他の四人も同様に感じたらしく、声の主に訪ねる者はいなかった。
ただ皆でうつむき、沈黙のまま時が過ぎた。
声の主も何も発しない。
このままいたずらに時間が流れるのを待っていても仕方ないと思ったのか、しばらくして一人、また一人とお互いの顔を見合わせ始めた。
すると、
「あっ、あなた私の斜め前に座っていたわよね?!」
突然、女性が少年に向かって叫んだ。
「そうよ、そしてあなたはバスの一番後ろに座っていたわ!」
と、女性は続けて若い男に視線を合わせた。
バス…。
あぁ、そうだ。私はバスに乗っていたんだ。都内から地方に向かう夜行バスに。
…なのに、ここは…