三毛猫レクイエム。
「あき、愛してる」
「……俺も」
あきが返答をためらう意味を知っている。だてにあきの彼女を四年も続けているわけじゃないから。
「真子、愛してるよ」
あきが、自分の死期を悟っていることくらいは、私も気づいていたんだ。
「真子」
あきが甘えたように私を抱きしめる。その体は痩せ細り、骨ばってしまっていた。貧血で、血色が悪い肌もどこか冷たく感じてしまう。
「もしも俺が死んだら、真子は泣くと思う」
「あき……」
「っていうか、泣いてくれないと、ちょっと寂しい」
あきがくすっと笑えば、その振動が私にも伝わってくる。
「真子、泣いていいから。俺がいなくなったら、泣いてくれればいいから。それこそ涙枯れるまで、泣いてくれてもいいから」
あきは、私の大好きな低い声で、私の耳元で囁く。
「だけど、涙が枯れたらそのときは、前を向いて歩いていくんだぞ。俺は、真子のそばにいてやれないんだからな」
そう、いつもと変わらない笑顔で、自分に言い聞かせるように囁くあきは、どれだけ辛かったのだろう。