三毛猫レクイエム。

「ヒロって、あきのこと言えないくらい猫好きじゃない」
「まあね。好きじゃなかったら、引き取ろうなんて思わなかったし」

 そう言って、ヒロも笑う。

「そうだよね」

 二人して何気ない話をしていると、ヒロの携帯が鳴った。

「お、返事来た」
「え?」

 ヒロは悪戯っぽく笑って、

「テツ」
「え!?」

 たった今受信したメールを見せてくれた。

『真子ちゃん、元気そうで良かった』

 一言だけのメールに、私は困惑する。

「もしかして、今の写メ、送ったの?」
「ユキとテツにね。特にテツは、真子さんのこと気にしてたし」

 ヒロもそうだったけれど、“Cat‘s Tail”のメンバーと個人的に仲が良かったわけじゃない。
 でも、あきと一緒に会ったことは何度かあったし、メンバーがあきのお見舞いに来たこともあった。それに、葬儀のときにも顔を合わせた。テツは、私が初めてあきと会ったときに一緒にいた。そんな彼らが、私のことを気にかけてると知って、少し恥ずかしくなった。
 そんな私の気持ちを悟ったのか、ヒロは微笑んだ。

「タキ、練習してないときとかは、いつも真子さんのことばっかり考えてたから、テツやユキにからかわれてたんだよ」
「そうなの?」
「ああ」

 いつも音楽に一生懸命だったあき。だからメンバーと一緒にいるときは、音楽のことで頭がいっぱいなんだと思っていた。
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