三毛猫レクイエム。

「私のこと考えてたなんて……なんか、意外」
「意外? なんで?」
「え、だって、あきって音楽一筋だったし」

 私の言葉に、ヒロは笑って、

「音楽に一生懸命だったけど、それと同じくらい真子さんにも一生懸命だったろ、タキ」

 そう言った。そのヒロの言葉が、私の心をほんのりと暖かくしてくれた。



第五章 塗り変わる、思い出



「同じくらい、か」

 ぽつりと呟いた私を、ヒロが伺った。

「同じじゃ不満?」

 私が首を横に振る。

「ううん、だって、あきがどれだけ音楽を大事にしていたか知ってるから。嬉しい」

 あきがとても大事にしていた音楽というもの。それと同じくらい私を大事にしてくれていたと、自分で考えているのと人から言われるのとでは随分違う。

「自惚れだと思ってたから、あきが私のこと好きでいてくれたはずだって」
「それは自惚れじゃなくて、事実だから、もっと自信持っておこうよ」
「でも、人から言われないと、やっぱただの自惚れだって思っちゃうよ」

 私の言葉に、ヒロは真顔になった。

「それじゃあ、俺が証明するから。タキは、真子さんのことを自分よりも大事に思ってた」
「っ……」

 みゃああ

 まるで同意するかのように鳴いたヨシを、私は撫でた。

「ヒロは、私を泣かせる気?」
「いや、笑顔でいてくれたら嬉しいな」

 涙が出てくる。だけど、それは悲しみと嬉しさが入り混じった不思議な感情のせい。
 あきに愛されていたという事実が嬉しいのと、そのあきがいないという悲しみ。
 泣き笑いになった私の頭を、ヒロがそっと撫でてくれた。
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