三毛猫レクイエム。
「この前、メンバーが見舞いに来てくれたらしいんだけど、俺、熱で寝込んでてさ。会いたかったなぁ」
何よりも音楽が、バンドのメンバーが、好きなあき。
「早く良くなって。そして、またあきの歌声を聞かせてね」
「おう」
最初の一ヶ月は、寛解導入療法といって、骨髄中で増殖し続ける白血病の細胞を殺して、身体が正常な造血をできるような状態に回復させるための治療だった。病気の症状が出ないことを、寛解(かんかい)というらしい。
そしてそれが終わったら、地固め療法の始まり。いろいろと抗癌剤の種類を変えて、寛解の状態を維持するための治療。
この治療が上手くいって、白血病細胞がなくなれば、ほぼ完治したといえる状態になるらしい。
それから、私はあきの体調と時間が許す限り、あきに会いに行った。その頃あきは、個室に入っていた。
「血管つぶれちゃった」
あきの腕には、たくさんの注射や点滴の跡。点滴のし過ぎで硬くなってしまい、痣になっているところをそっと撫でた。
元気だった頃に比べたら、随分細くなってしまった腕。
だけど、私を包み込む力は、変わらない。
「あき、これで良くなったら、外泊許可が下りるかもしれないよ」
「そうだな」
経過が良かったら、外泊許可を出せるってお医者さんが言ってくれた。
「一緒に頑張ろうね」
「ありがとう」
本当は、私にできることなんて何もなかった。
あきが一人で寂しくないように、孤独じゃないように、笑顔でいれるように、ただ会いにくることしかできなかった。
「真子に会えるだけで、生きようと思える」
「あき……」
「辛い治療も、俺のためじゃなくて、真子のためって思ったら、頑張れる」
そう言って、微笑んでいたあきの笑顔が翳ったのは、外泊許可が下りなかった日だった。