雨の音
ふと目が覚めると、まだお昼過ぎだった。
静かだった雨音が叩きつけるように響くほど強くなっている。
ベランダを開けると、若芽の木々と土のむせ返るような濃い匂いが、部屋中いっぱいに拡がった。
いつもは僕の足元で寝ているはずの愛理が、見当たらず、彼女の部屋のドアを静かに開けた。
彼女は寝息も立てず、微動だにせず、身体を硬くして熟睡している。
手元には大量の睡眠薬とクリスタルガイザーのペットボトルが散乱していた。
愛理は僕と慎一と暮らし始めて3年たった今も、睡眠薬なしでは眠ることができない。
いつも強い睡眠薬を常用しているけれど、今日に限っては大量に飲まなければ、眠れなかったのだろう。
まだ、たったの17歳の愛理。
身寄りすらいず、僕が死んだら、彼女はどうやって生きていくのか。
また、彼女は自分を売って生きていくのだろうか。
木々と土の匂いが、僕の記憶を呼び戻した。
柏木塁が死んだ日も、慎一と出会った日もこんな風に春雨が続いていた。
柏木塁は主に画商をしていたけれど、陶芸やガラス細工などの美しいものなら、なんでも扱っていた。
僕の両親が塁と古くからの付き合いで、僕は子供のころから、塁に可愛がってもらっていた。
僕の父は画家で、塁が父の才能を見出し、今では世界的に有名になり、両親共にフランスに住んでいる。
僕が画家志望だったこともあり、両親が僕を塁に預けたのだ。
慎一に出会うまで、僕はいつも塁の傍にいたことを思い出し、ため息とともに口元が緩んでしまった。
僕は塁の最後の恋人だったのだ。
静かだった雨音が叩きつけるように響くほど強くなっている。
ベランダを開けると、若芽の木々と土のむせ返るような濃い匂いが、部屋中いっぱいに拡がった。
いつもは僕の足元で寝ているはずの愛理が、見当たらず、彼女の部屋のドアを静かに開けた。
彼女は寝息も立てず、微動だにせず、身体を硬くして熟睡している。
手元には大量の睡眠薬とクリスタルガイザーのペットボトルが散乱していた。
愛理は僕と慎一と暮らし始めて3年たった今も、睡眠薬なしでは眠ることができない。
いつも強い睡眠薬を常用しているけれど、今日に限っては大量に飲まなければ、眠れなかったのだろう。
まだ、たったの17歳の愛理。
身寄りすらいず、僕が死んだら、彼女はどうやって生きていくのか。
また、彼女は自分を売って生きていくのだろうか。
木々と土の匂いが、僕の記憶を呼び戻した。
柏木塁が死んだ日も、慎一と出会った日もこんな風に春雨が続いていた。
柏木塁は主に画商をしていたけれど、陶芸やガラス細工などの美しいものなら、なんでも扱っていた。
僕の両親が塁と古くからの付き合いで、僕は子供のころから、塁に可愛がってもらっていた。
僕の父は画家で、塁が父の才能を見出し、今では世界的に有名になり、両親共にフランスに住んでいる。
僕が画家志望だったこともあり、両親が僕を塁に預けたのだ。
慎一に出会うまで、僕はいつも塁の傍にいたことを思い出し、ため息とともに口元が緩んでしまった。
僕は塁の最後の恋人だったのだ。