愛をくれた神様
 15年も前から、なぜか不定期的に来る。ハガキ。

 まったく見覚えのない、大阪の住所。 懐かしさを感じさせる、子供の字。何もかかれていない内容。

家に大事にとって置いてるはずのそれが、どうしてそこに入っているのか、なぜ私はそれが鞄に入っているのが分かったのか、全くもって分からなかった。

 走り出していた。

目を細める。
大きな公園と、桜の木の広場をはさんだ、どこまでも広い、広い道だった。まっすぐ行くと上り坂がある。

息がすぐに切れ、立ち止まる。体中から汗が吹き出、うなじがびしょびしょだった。

 男の子の走っていった先は、もうかげも形も見つける事ができなかった。

諦めて歩き出す。ハガキが手の中でぐしゃぐしゃになっている事に気づき、あわててそれを鞄に戻した。

あの子が口にした「ハガキ届くよ」が、これと関係しているような…、あの男の子はこのハガキの何かを知っているような、あの子をだいぶ前から知っているような……、そしてあの男の子に会うのは本当にこれで最後なような…… 私は、なんとなくそんな気がしたのだった。


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