廻音
今生で叶わぬ二人の永遠を、死を以て実現させようと試みる。

二人を救ったのは、薄れゆく意識の中で姉の唇から溢れ出した「愛している」の言葉だった。

その愛しているが彼の躰中に沁み渡った頃、漸く正気を取り戻す。

愛しているから望んだ未来。
ならば何故、「愛している」ならどうして彼女に手をかけれようか。

彼女が居るからこその続く自身の生命。
ならば決心は早かった。

彼は、姉に未来を与え、自身が彼女を失う事によって愛を確立させたのだ。

愛しているからこそ永遠を望む。
けれど愛しているからこそ、君が生きる世界を望む。
それが黒雅さんにとって、最後の愛情表現だった。

「輪廻さえ居てくれるだけで」、と語る、黒雅さんらしい決断だろう。
< 10 / 213 >

この作品をシェア

pagetop