廻音
先日とは違い、足取り軽く、光陽公園にはあっという間に着いた。
ウキウキした足取りではないけれど、明日、明後日と、これからの毎日に希望の光が射した事は、驚くべき進展だった。

「今日は私の勝ちー。」と、木製の看板に勝敗を言い渡し、公園内に足を踏み入れる。

もしも看板に表情があるならば、突然の敗北宣言にポカーンとした筈だ。



「ごめんなさい。また待たせちゃいましたね。」

やっぱりそうだ。
意図せずとも黒雅さんが待ち合わせに遅れる事はないんだ。

「謝る事ない。俺が早く着き過ぎただけで、廻音ちゃんが遅刻したわけじゃない。
俺が勝手に待ってたんだ。」

少し癖が強いだけで、容姿は完璧、更には紳士的だ。
それでいて一途。
モテないわけはないだろうに、それでも姉だけがいいんだから。

勿体無いなぁ、なんて思ってしまうんだ。
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