廻音
「ここで待ち合わせって、ちょっとドキドキしません?」

「どうして?」

「姉の部屋の目の前ですよ。見つかったらどうします。
あなたの事だからきっと、姿を現すシチュエーションなんかも考えてそうだし…姉の姿を見るにも心の準備ってものが必要でしょう。
それがこんな所で不意打ちのご対面なんて、ちょっと間抜けです。」

黒雅さんは少し考えてから、直ぐに笑ってみせた。

「大丈夫。ほら。」と後方を指さした。

私がくるりと振り向けば、「ね?」とはにかんだ。

「輪廻のマンションは後方にある。輪廻が通っても気付かない。
生憎目は前にしかついていないんだ。
まぁ、公園を突っ切って帰ってこられたらお終いだけどね。」

少しおどけた声に、私まで笑みが溢れる。

穏やかな日曜日だ。
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