廻音
「君が望む望まないは問題じゃないんだよ。俺が望むんだ。
俺は誰よりも君が大切で、君も俺を愛しているね?
だったら野外なんて要らない。そうだろう?
君を想う俺が居て、俺を想う君が居る。
二人は既に完成しているんだよ。それ以外必要な物なんてないんだ。」

溜め息が出そうになるのを必死に飲み込んだ。
彼の愛情表現は常軌を逸している。
常人には到底理解出来ないだろう。

「そんな事、間違ってる。
だったらあなたは私を束縛出来れば、私があなた以外の人全員と関係を絶てば満足なの?
そんなのただの傲慢じゃない!優しさじゃないわ。
そしてそんな事は有り得ない。私に関わる人、一人一人殺しでもしない限り、無理ね。」

興奮して半ばヒステリー気味に感情をぶつけた私は、少しスッキリしていたが、次の瞬間、頭から爪先まで冷水を浴びせられた様な「ヒヤリ」を体験する。



「廻音は頭のいい子だ。その通りだよ。」

とても愉快そうな口角が視界の中心で揺れている。
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