廻音
ここまでくれば、これ以上反論する事も憚られ、もう彼に従おうと思えてきた。

「分かったよ。でも本当に遅くなるかもしれないからそうなったら先に寝ててね。」

「どうせ泊まり込みなんでしょう。」と思っていたが、敢えて聞く事はせずに決めつけた。

「迎えに行くよ。」

「え?」

「あんまり遅くなりそうだったら心配だから迎えに行く。
だから何時になっても待ってる。
帰ってきたら、一緒に寝ようね。」

やっぱり。
泊まりは絶対なんだ。

「…分かった。じゃあ、行ってきます。」

行ってらっしゃい、と手を振る彼は、新妻の様に輝く笑顔で送り出してくれたのだった。
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