廻音
過去
三年前のあの夜、姉は春陽さんと帰路を共にしていたという。

「夜遅く、危険だから」という有りがちな名目でありながら、春陽さんらしい紳士ぶりで、「姉の部屋までは」無事に送り届けたくれたようだ。

日頃の常識では考えられないだろう。
自室において、悲劇が待ち構えていようなどとは…。

姉の住居に着き、当時「バイト中、春陽さんに迷惑をかけてしまったから。」と、お詫びとして準備していた手作りのお菓子を受け渡そうとしていた時だ。



「お帰り、輪廻。それ、だぁれ?」



「あれはもう正に悲劇が頭上から降ってきた瞬間だった。」
あの夜を振り返り、姉はそう称した。

声の主は当時の交際相手、黒雅 夜(クロガ ヨル)。
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