廻音
8
蒸し蒸しとした空気を回転させただけの生温い風が、それでもひんやりと足の指先を掠める。
シン、と静まりかえった室内に扇風機の羽の音と彼の寝息が共鳴している。

腕枕の上で幾度か寝返りをするうちに、今は彼の左手首に頭を乗せている状態となった。

腕の付け根まで転がっていき、自ら彼の腕を首に巻き付ける。

深呼吸をすれば、彼の匂いが鼻を擽る。
特別な匂いがするわけじゃない。
だけど來玖さんだけの、甘い匂い。
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