廻音
來玖さんが完全に寝息をたて始めた頃、彼の体温は触れ合ったままの私の体温も上昇させていた。
彼の様に寝付けそうにもなくて、ゆっくりと腕をほどき、窓際に近付いた。

数センチ開け放した窓から生温い風を送り込む。
湿気を帯びた風に夏の匂い。
遠くに虫の声を聴いていた。
フワフワと揺れるカーテンの隙間から月がニンマリと笑っている。

この空間だけ切り取られた様に、ポッカリと孤独を錯覚してしまう。
地に足も付けられないまま、宙ぶらりんな感覚。

直ぐ其処には彼が居てくれるのに…。

孤独は嫌。
拒絶は怖い。
彼を失うのはもっと嫌。

「依存型」。
そんな自分に安心出来る。
依存して、依存されて。
誰かを支えるという事実に、支えられている私。

儚い夏は全てを拐い、消えていく様で、胸騒ぎがするんだ。
< 74 / 213 >

この作品をシェア

pagetop