廻音
予め縁に糊を塗り、乾燥させたところに、使用人が再び水分を含ませる事によって
封をする事が出来るといったタイプの封筒で、
今回の「使用人」は、それ以外の接着物は使っていない様だ。
指をかければペリッと音がして
簡単に開封する事が出来た。

呆気なく引き出された便箋は封筒同様、ただ白いだけの、
だからか余計に胸騒ぎを覚える様な「白」だった。

僅かに指先が震えて見えるのは、気のせいにしよう。
二つ折りにされた便箋をゆっくりと開きながら、矛盾して、きつく目を閉じる。

何時までもこうはしていられないと解っていながら
あぁ、だけど私は思うより臆病だったのだと苦笑いさえしてしまいそうな心境だ。

この便箋の中身が何にしろ、然程自身には関係ないかもしれない。

なのにどうしてこんなにも、胸が騒ぐのだろう。
< 79 / 213 >

この作品をシェア

pagetop